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2009年2月14日 (土) 15:35時点における版
ムサイは、アニメ「機動戦士ガンダムシリーズ」に登場する架空の兵器。ジオン公国が開発・運用する一連の宇宙軽巡洋艦である。
概要
ムサイ級はモビルスーツ (MS) の運用を前提に開発されたもので、『機動戦士ガンダム』シリーズの劇中に多数の同型艦が登場した。艦の形状は主艦体後上方に支柱が伸び、その最上部に艦橋を備え、そこから左右下に伸びた板状の支柱の先にそれぞれ一基ずつの熱核融合ロケットエンジンを備える。艦橋の直下にはMSデッキが備えられ。艦後方に向けてモビルスーツを射出できる。またその側面には左右3ヶ所ずつの補給口があり、パプア級補給艦からの物資の直接搬入が可能である。
平均的なタイプはMSをデッキに4機、艦首にドッキングしているコムサイには2機の収納が可能。ただしコムサイは切り離さないとハッチの開閉ができないため、通常こちら側には搭載されない。MSは戦闘空域近くまでムサイに運搬されることで推進剤を節約でき、また帰還後に(宇宙空間では放熱が不可能なため)熱の蓄積した機体を冷却することができる。また、コムサイは大気圏突入用シャトルでもあり、ムサイ本体から切り離してMSや人員を輸送する事もできる。
主砲として連装メガ粒子ビーム砲塔三基や各種ミサイルランチャーを主艦体と艦橋の間に配置、単装の砲塔を前後に振り分けている連邦軍のサラミス級とは対照的な配置である。これは前方に全火力を集中できる反面、死角の多い設計で、特にTVシリーズに登場するムサイ級は小口径の対空機銃を持たない。後のOVAシリーズには、この点を改良したタイプが登場する。
ムック『機動戦士ガンダム 戦略戦術大図鑑』の記事では、ルウム戦役に投入された本級は、MSが投入されるまでの間に連邦軍との艦隊決戦を行い、同航戦での砲撃の応酬の結果、参加した78隻の全てが失われたとされる。もっともこういったことが書かれている資料は他には無く、また映像作品としてルウム戦役を描いた『機動戦士ガンダム MS IGLOO』第1話や、ゲーム『ギレンの野望』シリ-ズのムービーでの描写では、そこまでの大損害は出ておらず、「後付設定は映像化された段階で公式化」というサンライズのルールに従うと、こちらが正史ということになる。
最初のTVシリーズ以外の作品に登場するムサイ級には、形状の異なるタイプがいくつか登場している。続編である『機動戦士Ζガンダム』にはジオン共和国軍の艦であるムサイ改級が、OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』には最終型、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』には後期型(この分類はゲーム『ギレンの野望』シリーズより)が登場する。ただしOVAに登場する二種類は本来、古いTVシリーズのデザインをリメイクしたものだが、後に模型やゲームにおいて「後期型」「最終型」という扱いになったものであり、アニメのスタッフによる公式設定ではない。また「0083」の劇中で、MSは格納庫天井部分のカタパルトレールに載せられ、電磁リニア式に射出される描写がある。
ムック「ガンダムセンチュリー」では、エンジンブロックの間に巨大な降下カプセルであるHRSL(後に劇中にも登場するHLVに相当)を搭載することを前提に設計されこの独特な形状になったという、非公式設定が作られている。
漫画版「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」では輸送船を改装した巡洋艦と設定され、MSの積載能力も問題ないとされている。ベースとなった輸送船型や客船型は、ムサイとは上下逆のレイアウトになっている。なお現実世界の改装艦船によくあるような、将来の改装を前提とした、容易に巡洋艦化できる設計になっていたかどうかは不明である。また当初より艦後方への対空火器を備え、シャアのファルメルは1個小隊(2個分隊6機)とシャア専用機、計7機のザクを搭載していた。
ムサイの設計思想は後に連邦軍の艦にも受け継がれ、ティターンズのアレキサンドリア級巡洋艦のレイアウトにもその面影を見る事ができる。
諸元
- 全長:234.0m、全幅:103.2m、基準排水量:13000トン、満載排水量:26200トン、主機:熱核ロケットx双発推進
特別な改装を施されていないU.C.0079年時の最も標準的な艦容である。
- 兵装
- ムサイ(ノーマル):連装メガ粒子砲×3、145型大型ミサイルランチャー×2、Cクラス小型ミサイルランチャー×10
- ムサイ後期型:連装メガ粒子砲×5、連装155mm機関砲×10、ミサイルランチャー×10
- ムサイ最終型:連装メガ粒子砲×2
- ムサイ改:連装メガ粒子砲×3、大型ミサイルランチャー×2、小型ミサイルランチャー×10、単装機関砲×2
艦種の議論
現実世界での「軽巡洋艦」(英語略称「CL」)とは本来、第一次ロンドン軍縮条約で巡洋艦の排水量、主砲口径、保有総トン数等が制限された際便宜上儲けられた艦種名であり、主砲口径15.5センチまでの巡洋艦のことである。基準排水量1万トン以内、主砲口径20センチまでの艦は「重巡洋艦」と呼ばれる。なお現代では、重巡・軽巡の分類は行われていない。
最初のTVシリーズでの分類は「巡洋艦」であったが、重巡洋艦であるチベ級の登場以降「軽巡洋艦」とする記事も現れた。 資料によってはムサイ級の艦種を軽重問わぬ「巡洋艦」とし、キャメル艦隊の主砲2基型艦のみを「軽巡洋艦」としている場合もある。
昨今の資料ではキャメル艦隊のものを含めムサイ級の艦種の略称を「CC」としており、これらは本級を単に「巡洋艦」として扱っている模様である。
艦名
以下は、劇中で名称の判明している艦である。これ以外にも、名称不明の艦が多数登場した。なお、ネームシップの“ムサイ”と特定できる艦は登場していない。
機動戦士ガンダム
ファルメル
劇中冒頭におけるシャアの乗艦であるムサイ級の一隻。通常のムサイの艦橋が平たい箱型なのに対し、ヘルメット状の特異な形状で、その内装も大きく異なる。もともとはドズル・ザビの乗艦だったが、ルウム戦役での功績により、シャアが譲り受けた(画像)。漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、V作戦の本拠地探索の任務を与えたシャアのためにドズルが新規に用意させた設定になっている。
なおファルメルという艦名は、かなり後年になってからつけられたもので、TV版、劇場版当時は「シャア専用ムサイ」とだけ呼ばれていた。
キャメル・パトロール艦隊所属艦
- キャメル
- ドレン指揮するキャメル・パトロール艦隊の旗艦で、リックドムを搭載する。元上官であるシャア・アズナブルの要請により、ホワイトベースに艦隊戦を挑むが、ガンダムにより沈められた。
- トクメル
- ホワイトベースとの艦隊戦の際、砲撃により沈められた。
- スワメル
- ホワイトベースとの艦隊戦の際、ガンダムの攻撃により沈められた。
キャメル・トクメル・スワメルは本来連装三基の主砲塔が2基しか描かれていない。これは単なる作画ミスと推測され、TV版では、ビームは普通のムサイ同様3対発射されていた。しかし、放映後に発行されたムック「ガンダムセンチュリー」において「大戦末期にはメガ粒子砲を二基に減らした簡略タイプの生産も行われた」という非公式設定が付け加えられた。
『THE ORIGIN』では三艦とも通常の砲塔3基型であるが、旗艦キャメルのみ艦橋上部にアンテナが2本追加されている。
クワメル
コンスコン機動部隊に所属。中立区域のサイド6から出港する[1]ホワイトベースとの砲撃戦で真っ先に沈められた。ホワイトベースを包囲するために単艦で迂回行動をとったが、本隊が先走って戦火を開いてしまった。その結果、交戦の禁じられたサイド6の空域からまだ出ていないクワメルは絶好の標的になってしまい、反撃できずに撃沈された。
バロメル
マ・クベ指揮するソロモン救援艦隊(マ・クベ艦隊)に所属。テキサスコロニー宙域においてマ・クベがガンダムとの一騎討ちに出た後、旗艦艦長デラミン准将の指揮下で行動するが、ホワイトベースの砲撃により大破、後撃沈される。
機動戦士ガンダム0080
ワルキューレ
艦名の由来は北欧神話に出てくる神『ワルキューレ』から。
ルビコン作戦の一環としてリボーコロニーへの核攻撃を行うフォン・ヘルシング大佐のグラーフ・ツェッペリンの護衛に就く。
漫画『THE ORIGIN』に同名のムサイが登場している。ファルメル以上の改修をされており、ドズル・ザビの乗艦になっている。0080に登場したムサイとの関連は不明。
ジークフリード
艦名の由来は『ニーベルンゲンの歌』の主人公ジークフリートと推測される。
ワルキューレと同じく、グラーフ・ツェッペリンを護衛。なお、ヘルシング艦隊は往路途上で連邦軍と遭遇して護衛艦1隻を失い、中立国への核攻撃という暴挙を行うことなく投降している。どちらが沈められたかは不明。
機動戦士ガンダム0083
ペールギュント
改装強化された後期型ムサイ。アナベル・ガトーの搭乗艦。艦名の由来はヘンリック・イプセンが1867年に作った戯曲(劇詩)『ペール・ギュント』から。星の屑作戦の終盤でコウ・ウラキの駆るGP03にビームサーベルで真っ二つにされて撃沈された。
ペール・ギュント以外にも何隻かの最後期型がデラーズ・フリートやシーマ艦隊で確認されている。なお、シーマ艦隊の所属艦はムサイ伝統の緑ではなく、カーキ色に塗装されている。
MS IGLOOシリーズ
- シュレスヴィヒ
- 『機動戦士ガンダム MS IGLOO』に登場。
- ルウム戦役で第32戦隊に所属していた。本艦の爆沈により同戦隊の単縦陣が崩れたことから、先頭を航行中だったものと思われる。また劇中、最初に連邦軍艦隊の砲撃による被撃沈が確認できるムサイ級巡洋艦である。
- ケンプテン
- 『機動戦士ガンダム MS IGLOO 黙示録0079』に登場。
- 第91パトロール艦隊所属。僚艦1隻と共に[2]ア・バオア・クー戦においてEフィールドを横断するヨーツンヘイムを先導、護衛する任に付いた。しかし、Eフィールドの目標地点手前にて敵艦隊と遭遇、僚艦が艦橋右基部にメガ粒子砲の直撃を受け、撃沈される。しかし本艦とヨーツンヘイムは、敵艦隊の間隙をぬうことに成功し、護衛目標であるヨーツンヘイムと共に無事目標地点に到達、オッゴ10小隊のヨーツンヘイム発艦を見届けた。だが、その直後に現れた新たな敵艦隊からの2発のミサイルが直撃し、撃沈されている。
- ノルトハウゼン
- 『機動戦士ガンダム MS IGLOO 黙示録0079』に登場。
- ア・バオア・クー戦においてEフィールドをヨーツンヘイムと共に防衛していたという説と、NフィールドからEフィールドを抜け、本国のサイド3へ撤退中の親衛艦隊の1隻もしくは別の所属の艦だったとする説がある。その際、おそらく損傷した熱核融合炉が臨界点を突破し暴走[3]、爆沈している。
『MS IGLOO』に登場するムサイ級の艦名はドイツの地名に由来し、シュレスヴィヒは州名(シュレスヴィヒ・ホルンシュタイン州)、ケンプテン、ノルトハウゼンは都市名である。
その他
ハボック
MS-06R-3を使用した公国軍初のビームライフル試射実験を行った実験艦隊の所属艦。実験中に連邦軍MS部隊の襲撃により撃沈される
ホーカム
MS-06R-3を使用した公国軍初のビームライフル試射実験を行った実験艦隊の所属艦。
コムサイ
ムサイ級の前部に搭載されている宇宙往還機(画像)。大気圏突入カプセルと呼ばれるが、大気圏内でもそれなりの機動性を有するリフティングボディ機である。ガイドレールをつかってムサイから射出されることで発射初速を得るため、姿勢制御以外の推進剤の消費無しで地球帰還が可能である。
ザクを2機搭載できる貨物スペースの左右に軌道エンジンと制御エンジンブロック、武装であるマシンガンブロックおよび小デルタ型の水平安定板と延長保持された垂直安定板がつく構造である。機能のわりにコンパクトで、ガウ攻撃空母に収容できるサイズである。
気密キャビンは衝撃波の内側に入るよう上部中よりに取り付けられているため、着陸時に必要な前下方の直接視認ができない。機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY登場の機体ではポップアップ式に改良され、下方視界が大きく向上した。
地球からの脱出には、「マスドライバー+ブースター」「空中発射機+ブースター」「有翼ブースター」などの組み合わせがあると推測されるが、劇中で描かれたことはない。機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY登場の機体は、有翼ブースターらしき物を装着していたようにも見えるが、離陸直後に撃墜されている。
貨物室は、後部に気密通路付ハッチ、上部に片持ちハッチ、下部に観音開きハッチと3方向の開口部がある。このため、空中での貨物投下を含め、どのような姿勢でも荷物の搬出入ができる。
- 漫画版機動戦士ガンダム THE ORIGINでの改変
- パプアからファルメルへの補給時、ザク4機を搭載可能な大型のコムサイ(W・コム)が引き渡される。これは3機のザクが登場するシーンにも係らず、2機しか収容できないコムサイでは木馬降下妨害作戦に参加するパイロットが納得しないだろうという理由によるものである。
- ムサイに接続した際の不釣合な外観からドレンには不評で、「ママコ(継子)ムサイ」と呼ばれていた。
設定解説
メカデザインはTVシリーズ版が大河原邦男、Zガンダム版が藤田一己、0080版が出渕裕、0083版が河森正治による。
名前の元ネタについては諸説ある。一つは、旧大日本帝国海軍戦艦武蔵からきているというもので、同じ富野由悠季監督作品である『伝説巨神イデオン』に登場する宇宙戦艦「ムサッシ」もそのように連想できる。もう一つは、ギリシャ神話の神ゼウスと女神ムネモシュネの間に生まれた姉妹達の総称「ムーサイ」からの命名とするものである。
ムサイのデザインはホワイトベース同様に前作「ダイターン3」で原案ができあがっており、基本レイアウトはアメリカのTVシリーズ“スタートレック”に登場する宇宙船“エンタープライズ”の翻案である。これを上下反転させ、細部の変更や武装の追加が行われている。エンタープライズのスワン型に対して逆スワン型宇宙船と呼ばれる。『機動戦士ガンダム記録全集』などに掲載されている準備稿では司令室が最下部にあったが、諸般の事情により反転された。